読者の方から質問を頂きました。
Twitterで摂食障がいが話題になっていたけど、主にどのような症状が出るんですか?また、他の病気と比較してどのぐらい重い病気なのでしょうか?
摂食障がいについて、一緒に学んで行きましょう!
身近にいる大切な人が、摂食障がいを発症してしまうこともあると思います。そういった場合の予備知識としても、参考になれば幸いです。
摂食障がいとは
摂食障がいとは、「身体の健康を著しく損ない、心理的/社会的/金銭的な悪影響を及ぼす精神障がいである」とされています(1)
主な症状は、後述する摂食障がいの種類によって様々ですが、食べ物に対する猛烈な嫌悪感によって引き起こされる著しい拒食や、抑えきれない食欲/衝動により著しい過食をしてしまうことなどが挙げられます。
また、食べ物ではないものを食べたくなってしまう衝動に駆られることや、自己誘発性のおう吐や下剤の使用によっておう吐を繰り返してしまう行為、肥満への強烈な不安感から過度の運動を行ってしまうことなども症状に含まれる場合があるようです。
さらに、上記の症状に伴い、肥満や心血管疾患を併発したり、反対に著しい飢餓状態/栄養失調を招くこともあります(2,3)
加えて、症状が続くにつれ、うつを併発したり、自傷行為に及んでしまうケースもあります(4,5)
また、ノースカロライナ大学らが行った、18本の文献を用いて行った系統的レビューによると、女性の方が男性よりも発症リスクが約8倍高いことや、食事や運動といった環境要因だけではなく、遺伝的な要因によって摂食障がいを発症する可能性も示唆されています(6)
6種類に分類される摂食障がい
さっき”摂食障がいにはいろんな種類がある”って言ってたけど、どんな種類があるの?
摂食障がいは最近研究が進んできた病気で、どうやって分けるのか、いくつに分かれるのか、は研究によって異なっていた。調査した中で最新だと思われる分類の例をあげてみるよ。
2020年にロンドン大学などから発表された論文によれば、摂食障がいとは以下の6つに分類され、それぞれ異なる症状を発症するようです(1)
- 神経性無食欲症
- 神経性過食症
- 過食症
- 選択的/制限的摂食障がい
- 異食症
- 反芻障がい
摂食障がいって聞くと、「拒食」をイメージしていたけど、他の症状も含まれているんだね。
私も調査をするまでは全く同じイメージを抱いていました…それぞれの症状については別の記事で詳しく解説しますので、続いて発病率について学んで行きましょう!
発病率はどれぐらい?
発病率に関しては、複数の研究がなされていますが、研究の内容や対象者の年齢/性別によってさまざまな結果が出ています。今回は3つの研究をご紹介。
1つ目は、2009年に発表された、イタリアのGenneruxi Medical Centerらが、ヨーロッパ6ヵ国に住む、21,425人の非精神障がい者(18歳以上)を対象にした研究です。こちらの研究によれば、生涯発病率は約0.48%とまれな病気であるとされながらも、10~20歳の青年期に発症することが多いということがわかっています(7)
2つ目は、コロンビア大学から2003年に発表された、女性を対象とした研究です。こちらの研究では、神経性無食欲症の生涯発病率は最大4%、神経性過食症の生涯有病率は最大2%である可能性が示されています(8)
3つ目の研究は、スウェーデンのイェーテボリ大学らが2019年に発表した研究です。こちらの研究では、4,291人の学生を対象に、30年間の追跡調査が行われました。その結果、参加者のうち約6%の人が無神経無食欲症と診断されました。また、その他の摂食障がいも含めると、なんと全体の約20%の人がなんらかの摂食障がいであったという診断結果が出ています(9)
女性や、青年期の人を対象に研究をすると、有病率が上昇していっていることがわかるね。
そうだね。加えて、青年期の人を対象にした研究はそもそも数が少ないんだ。ほとんどの研究は、大人になってから青年期を振り返ってもらったものだった。だから、3つ目の研究の「約20%の人がなんらかの摂食障がいであった」という結論は、ある程度信頼できると思うよ。
摂食障がいに悩んでいる人は、思っている以上に多い可能性があります(最大で5人に1人)
ほかの病気と比較すると?
大変そうな病気だってことはわかったけど、結局どれぐらい大変な病気なのかよくわからないよぅ…
ほかの病気と比較している研究も見つかったから、紹介するよ!
2016年にハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学らが発表した研究によると、摂食障がいによって発生する、発病者自身の医療利用負担(通院や入院にかかる時間、医療費など)は、統合失調症を発病した場合と同等またはそれ以上になるケースがあり、介護者が必要となる場合が多いようです(10)
また、2020年にオランダのフローニンゲン大学らが発表した研究によると、摂食障がいは、慢性状態の腎臓病や、重度の心不全より重い病気であると共に、統合失調症よりは軽い病気であるというデータが出ています(11)
「単純に食べ物の好き嫌いが激しいだけ」「食欲を抑えられずにドカ食いをしてしまっているだけ」なんて偏見を少し抱いていたけど、とても大変な病気なんだね。
ほかの病気と比較すると、その大変さがよくわかるよね。続いて、必要な治療費についても確認していこう。
必要な治療費は?
必要になる年間医療費は、ケースバイケースでばらつきが大きいですが、最小で888ユーロ、最大で55,270ユーロ必要になった、というデータが出ています (10)
これは当時の為替(約124円/1ユーロ)で概算すると、888ユーロ=約110,112円、55,270ユーロ=約6,853,480円となります。
最大で約700万円/年もかかるの!?
この内訳は、米国での入院費、カウンセリング費、薬代などになっているね。アメリカは世界的に見ても、医療費の自己負担額が高い傾向にあるから、日本で治療する場合はこんなにかからないと思うよ。
また、日本には月あたりの医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額を超えた分が払い戻される、「高額療養費制度」という制度があります。医療費が高額になってしまった場合でも、焦らずに、こういった制度を利用していきましょう。詳しくは、全国健康保険協会ホームページをご覧ください。
まとめ
本記事では、摂食障がいについて解説しました。
- 症状は、主に著しい拒食/過食であり、栄養失調、心血管疾患、うつ、を併発することもある
- 自傷行為に及んでしまい、最悪の場合、死亡してしまうケースもある
- 青年期(10~20歳)に発症することが多く、最大で5人に1人は発症している可能性がある
- 医療費が高額になる場合がある
- 高額医療費制度などのセーフティーネットを有効活用すべき
摂食障がいは、思っている以上に身近に存在している病気です。親しい友人、家族などが摂食障がいを発症してしまった場合は、優しく寄り添ってあげたいですね。
本記事が少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。今後も、健康のための具体的な食事法や、具体的なメンタルケアの方法まで、細かいコンテンツに分けて情報発信を続けて参ります。
これからも一緒に、健康に関する知識を深めていきましょう!
以上、Strix Hiroでした。